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トレーニングは本当に追い込むべき?

こんにちは、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科でトレーニングについて研究をしています、久保孝史(くぼたかふみ)です。

国内では古くから部活動においてしごきがあったように、現在でも「根性練」をしている部活動、チームが多くあるようです。

ここでいう根性練とは、「必要以上の練習を精神論で強要すること」と定義します。つまり「ただきついだけで何も生み出さないどころか、弊害にもなりうる練習」のことです。

ウェイトトレーニング(以下トレーニング)にも似たような風潮があります。

トレーニングのモチベーションを上げるために海外の動画を見ている方は、その中でよく「One more reps!!(あともう一回!)」と周りが盛り上げているのを聞いたことがありませんか?

これは、「自分を追い込んで強くなれ!」的な精神論が含まれているのだろうと、私は勝手に思っています。私もトレーニング室にいるとよく「もう一回!いける!」という声を耳にします。

科学の世界でも一昔前までは「追い込んで筋肉を大きくするとそれに伴ってパフォーマンスが向上する」と考えられていましたが、最近では「それも一理あるけど、もっと効率的な方法があるのでは?」ということに注目が集まっています。

そこで今回は、最近注目を集めているトレーニング法を紹介するとともに、その活用法も紹介していきたいと思います。

重量ではなく、速度を基準にする

これまでのトレーニングは、最大挙上重量(1RM)を基準にして、例えば下半身のパワー(力×速度)向上のためにはスクワットを1RMの50-70%の負荷でやりましょう、なんてことが言われていたと思います(1)。

▼RMとは

ですが一言に「パワーを向上しよう!」とは言っても、パワーは目に見えるものではないので、いつ、どのタイミングで重量を上げていいのかわからないという欠点があります。

またトレーニングには「漸進性の原則(身体の適応に応じて使用重量を上げていく)」というものがありますので、1年を通して同じ重量を扱うのもあまりよろしくありません。

さらに、無理に追い込んだトレーニングをしてしまうと筋肉の性質が変わってしまうことが報告されています(2)。
 
 

そこで最近、Velocity Based Training(VBT)というコンセプトが注目を集めています(3)。これは無理矢理日本語に訳すと「速度基準トレーニング」となります。

このトレーニング方法はLinear Position Transducer(LPT)や加速度計(4)という機器を用いて、筋力、筋パワー、筋肥大など、それぞれの目的にあわせた最適な「速度」の範囲内でトレーニングをおこなうというものです。

LPTとは、バーベルに取り付けたケーブルが引き出された距離と時間から速度を算出する機器のことです。以下の動画の1:40秒あたりで「フィットロダイン」というLPTが使用されているので、興味がある方は参考にしてください。

VBTの実際の手順と注意点

  • LPT、または加速度計をバーベルに取り付ける
  • エクササイズ中の挙上速度、パワーがトレーナー(または補助者)の持っているタブレット端末に表示される
  • それをもとにトレーナーがキューイング(指示)をおこなう(もっと早く挙げて!とか)
  • 速度が基準値よりも下回ったらセットを終了
  • その際に、速度が極端に基準値よりも上回っていたら重量を追加、下回った場合は減らす
  • 基準値の速度であげられなくなったら種目自体を終了。次の種目へ移る

以上が基本的な実施手順ですが、他にも様々な方法があります(5)。

VBTはトレーナーがトレーニング中に指示を出すことで、トレーニング効果を最大限まで引き出すことができるようです(6, 7)。

また、追い込むトレーニングと比較して総仕事量が少ない(総合してトレーニングをしている時間、量ともに少ない)にもかかわらず、大きなトレーニング効果を生み出すことも明らかになっています(2, 5)。

ただし、VBTを行う際の注意点としては、LPTや加速度計が比較的高額である事スピードばかり意識してしまいフォームが崩れてしまう事、などが挙げられます。

まず初めは速度を意識したトレーニングができるようにきちんとフォームを作って、そこからVBTにチャレンジしてみてもいいかもしれませんね。

最後に

このように今では追い込むトレーニングではだけなく、速度を意識したトレーニングも有効という研究が出ています。今までは追い込むことが正しいという考え方が広かったですが、今後は変わっていくかもしれませんね。

また、私はメンタルの専門家ではないので、追い込んだ、または追い込まないトレーニングが人、及び集団の精神にどのような影響を及ぼすかを知りません。

なので今回はあくまでも追い込まないトレーニングが「身体的」にどのような影響を及ぼすのかを書いてみました。何かあれば質問してくださいね。

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参考文献

1) Moir GL, Gollie JM, Davis SE, Guers JJ, Witmer CA. The effects of load on system and lower-body joint kinetics during jump squats. Sports Biomech. 2012 Nov;11(4):492-506.
2) Pareja-Blanco F, Rodríguez-Rosell D, Sánchez-Medina L, Sanchis-Moysi J, Dorado C, Mora-Custodio R, Yáñez-García JM, Morales-Alamo D, Pérez-Suárez I, Calbet JA,
González-Badillo JJ. Effects of velocity loss during resistance training on athletic performance, strength gains and muscle adaptations. Scand J Med Sci Sports. 2016 Mar 31.
3) Mann,B.,Developing explosive athletes:Use of velocity based training in training athletes, 2nd Edition, 2013.
4) Balsalobre-Fernández C, Kuzdub M, Poveda-Ortiz P, Campo-Vecino JD. Validity and Reliability of the PUSH Wearable Device to Measure Movement Velocity During the Back Squat Exercise. J Strength Cond Res. 2016 Jul;30(7):1968-74.
5) PaduloJ, P.Mignogna, S.Mignardi, F.Tonni,and S.D’Ottavio. Effectof different pushing speeds on bench press, Int J Sports Med, 33(5), 376-380, 2012.
6) Argus, Christos K; Gill, Nicholas D; Keogh, Justin WL; Hopkins, Will G. Acute Effects of Verbal Feedback on Upper-Body Performance in Elite Athletes. J Strength Cond Res. 2011 Dec;25(12):3282-7.
7) Randell AD, Cronin JB, Keogh JW, Gill ND, Pedersen MC. Reliability of performance velocity for jump squats under feedback and nonfeedback conditions. J Strength Cond Res. 2011 Dec;25(12):3514-8.