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トレーニング科学で考える「スポーツ選手のための筋トレ法」

こんにちは、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科でトレーニングについて研究をしています、久保孝史(くぼたかふみ)です。

一昔前までは「カラダが重くなってしまうかもしれない」「カラダが硬くなりそう」というイメージが付きまとっていたレジスタンストレーニング(いわゆる、筋トレ)。※以下、トレーニング

昨今ではSNSやインターネットメディアの普及のおかげで、トレーニングの情報が幅広く届くようになり、競技選手が競技力向上のためにトレーニングをおこなう、ということが自然な流れになりつつあります。

ですが、ネット上では膨大な量の情報があるため、「どれを信じるか」といった取捨選択が重要になってきます。(例えば、そこに書いてあることが個人の主観ではなく、客観的事実に基づいた考察なのか、否か)

そこで本稿では、「科学的知見」つまり、現在研究でわかっているデータなどの客観的事実を元に「スポーツ選手のための筋トレ法」というテーマでお話をさせていただきます。

トレーニングをすると柔軟性が向上する

さっそく、「スポーツ選手のための筋トレ法」をお話ししたいところですが、まずは多くの人が筋トレに対して抱いている誤解を先に解決しましょう。

上記にもあるように、「トレーニングをすると体が硬くなる」イメージをお持ちの方は、いまだに多いのではないでしょうか?

ですが、実はできる限りの可動域を使ってトレーニングをすると、ストレッチと同等かそれ以上の関節可動域(関節が動くことのできる範囲、柔軟性のひとつの指標として用いられる)の向上、さらにストレッチをした場合よりも筋力向上が望めることが報告されています(1)。

これを一般的な言葉で言うなら、「トレーニングをすると身体が柔らかくなって、大きな力が出せるようになる」ということになります。

なので、トレーニングをすることで身体が硬くなる心配をする、ということはなくて済みそうですね。

少し専門的な話をすると、「なぜトレーニング、ストレッチをすることで可動域が向上するか」についてはまだ決定的な説はありません。

現在では筋線維(筋肉自体)の物理的な変化はあまりせず、「Stretch tolerance」という神経的な能力(筋肉が伸ばされることによって発生する痛みなどの不快感に耐える能力)が向上することが、柔軟性の向上に影響を与えているのではないかと言われています(2)。

トレーニングは競技動作に似せた方がいい?

「スポーツ選手のための筋トレ法」は、ただトレーニングをすればいいというわけではなく、それをおこなう方法も重要となってきます。

ある関節角度でトレーニングをおこなうと、その関節角度周辺での力発揮が向上する「関節角度特異性」が報告されています(3)。

これを文献の通りに読み取ると、「競技が行われる関節角度でトレーニングをおこなう方が効果は大きいよ」ということになるので、現場では可動域を制限した(動作に似せた)トレーニングも行われているようです(4)。

ですが上記にある通り、トレーニングをおこなうと関節可動域が向上し、筋力も向上するので、それに伴って競技に必要な技術も変化する(例:跳ぶ時にもっと深くしゃがむようになる)ことが十分考えられます。

つまり、見た目だけで安易に「この方が競技動作に似ているから!」と決めつけてトレーニングをおこなうのは、その効果を無くしてしまうばかりではなく、せっかく獲得した可動域を使わない、まさに宝の持ち腐れ状態になってしまいます

さらに、競技パフォーマンスには筋力よりも筋パワー(力×速度)の方が大きく関連することが知られています(5)。

以上のことをまとめると、最終的に「スポーツ選手のための筋トレ法」に必要なのは、「可動域全域を使ったトレーニングをして傷害予防をしつつ、パワーを向上させる」ことだと私は思っています。

これまでのトレーニングの弱点と対処法

ここまで読んで、「いつも可動域全域を使ってトレーニングしてるよ!」という人もいるかもしれません......。

ですが、通常のバーベルを使ったトレーニングには弱点があります

1989年の研究では、80%1RMのベンチプレスをおこなうと、バーの重さよりも小さな力しか出していない「減速局面」が挙上局面(バーベルを挙げる動作)の約60%を占めてしまうことを報告しています(6)。

▼RMとは

つまり、先ほどの理論(可動域全域を使う)に従ってトレーニングをしようとすると、挙上局面中盤から終盤では十分な負荷が得られないことになってしまいます。

そこで、弾性バンドを用いたトレーニングが注目されています。

弾性バンドは挙上局面終盤になるに従って引き伸ばされるため、張力(抵抗)を発揮します。そのため、バーベルのみでおこなう場合よりも挙上局面中盤から終盤の力、パワー発揮が大きいことも確認されています(7)。

▼参考動画

さらに、8-10週間という比較的短期間の研究でも筋力、パフォーマンス向上効果が確認されています

ですが、バンドの負荷が20%1RMを下回ってしまうと効果が弱くなったり、なくなったりしてしまうことがある(8)(9)ようなので、「何キロ(正確には何ニュートン)をバンドから負荷するのか」というのは重要であることのように思います。

まとめ

できる限りの可動域を使ってトレーニングをすると関節可動域の改善を望むことができます。そしてそれは神経的な影響が大きいのではないかとも言われています。

さらに、可動域が改善されればそれに伴って技術も変化することが考えられるので、競技選手は可動域全域を用いてトレーニングをすることが傷害予防、競技力向上への近道です。

可動域全域を使ったトレーニングには弱点もありますが、それはバンドを使って補完できるため、バンドから何キロの負荷をかけるのか、ということに注意を向けるのもいいかもしれません。

参考文献

  1. Morton, SK, Whitehead, JR, Brinkert, RH, and Caine, DJ. Resistance Training vs. Static Stretching: Effects on Flexibility and Strength. J Strength Cond Res 25: 3391–3398, 2011.
  2. Konrad, A and Tilp, M. Increased range of motion after static stretching is not due to changes in muscle and tendon structures. Clin Biomech 29: 636–642, 2014.
  3. Yoon, TS, Park, DS, Kang, SW, Chun, S Il, and Shin, JS. Isometric and isokinetic torque curves at the knee joint. Yonsei Med J 32: 33, 1991.
  4. Rhea, MR, Kenn, JG, Peterson, MD, Massey, D, Simão, R, Marin, PJ, et al. Joint-Angle Specific Strength Adaptations Influence Improvements in Power in Highly Trained Athletes. Hum Mov 17: 43–49, 2016.
  5. BAKER, D and NANCE, S. The Relation Between Strength and Power in Professional Rugby League Players. J Strength Cond Res 13: 224, 1999.
  6. ELLIOTT, BC, WILSON, GJ, and KERR, GK. A biomechanical analysis of the sticking region in the bench press. Med Sci Sport Exerc 21: 450462, 1989.
  7. Israetel, MA, McBride, JM, Nuzzo, JL, Skinner, JW, and Dayne, AM. Kinetic and Kinematic Differences Between Squats Performed With and Without Elastic Bands. J Strength Cond Res 24: 190–194, 2010.
  8. Stevenson, MW, Warpeha, JM, Dietz, CC, Giveans, RM, and Erdman, AG. Acute Effects of Elastic Bands During the Free-weight Barbell Back Squat Exercise on Velocity, Power, and Force Production. J Strength Cond Res 24: 2944–2954, 2010.
  9. Bellar, DM, Muller, MD, Barkley, JE, Kim, C-H, Ida, K, Ryan, EJ, et al. The Effects of Combined Elastic- and Free-Weight Tension vs. Free-Weight Tension on One-Repetition Maximum Strength in the Bench Press. J Strength Cond Res 25: 459–463, 2011.