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子どもの「運動スキル」を指導するための3つのポイント

こんにちは、ジュニアユースを対象にした育成やフィジカルトレーニング、運動学習などをテーマにした講演活動や、強化育成システムの研究活動をしている「小俣よしのぶ」です。

今回は、前回の記事【「運動神経」なんてない、必要なのは「運動スキル」】の続編として、私が「運動スキル」を指導する際に基本としているポイントをご紹介します。

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運動スキルやコツを指導するためのポイント

私が基本としている指導のポイントは以下の3点です。この3点についてそれぞれ詳しく解説します。

  • 教え込まない
  • はみ出す
  • 完成させない

教え込まない

まず、「教え込まない」こととはつまり、子どもに「教えるのではなく感じ取らせること」です。

とかく指導者は教えてできるようにしてやりたい、あるいは指導者の理想形に子どもを当てはめようとします。

しかし、それでは子どもが答えを見出す前に答えを与えることになり、答えを模索する段階で出会うさまざまな体験や気づきを指導者が奪ってしまうことや、指導の強制が子どもをロボット化することに繋がります。

私は指示をするのではなく、考えさせ意見を述べさせます。あるいは「どんな感じがした?」と聞くようにします。

感覚に基づく指導は非科学的だと否定する人もいますが、感覚で運動を捉えることができないとコツの習得は困難です。

教え込んでしまえば創造性がなくなり、聞けば教えてくれると考える「指示待ち人間」を生み出します。

はみ出す

次に「はみ出す」とは逸脱するところにある、未知の体験を得るということです。

運動スキルは与えられた運動ができるようになることではありません。それは前回例に出したスポーツ系幼稚園などの事例が示しています。

人間の発達は「刺激」と「刺激への適応」によるものですが、子どもは与えられことをやり続けると興味が失われ、刺激が減少します。

親が目を離すと危ないことやとんでもない事をしようとするのは刺激を求めての行動です。それなのに我々大人は、「お行儀がよくない」、「怪我をする」と言って子どもの動き、つまり興味と刺激を制します。

はみ出すことは未知の体験を得ることにとってたいへん重要です。はみ出すところに運動スキルの体験があるのです。

したがって練習を事前に決めることや、デザインすることには意味がないのです。マイネル博士も環界との活発な交流が必要だと述べています。

デザインされたものや決められたことからはみ出して何かをしようとする時、思いがけない体験や運動課題が子どもに立ちはだかります。それを体感し、乗り越えるために自身の全身全霊・全知全能を使って克服する過程に運動スキルの習得があります。

完成させない

最後が「完成させない」です。運動スキルの習得は、運動スキルの習得や完成が目的ではありません。運動体験による感覚運動を積むことです。したがって、そこには完成形がありません

「跳び箱を何段、きれいに跳べるようになる」……

これは運動スキルが目的化しており、これでは跳び箱運動のトレーニングをしたことになってしまいます。

運動スキルは運動体験で感覚を磨くことですから、その過程は千差万別、そして個別的になります。さまざまな運動体験を積んだ結果として跳び箱が跳べるようになることが運動スキルのトレーニングです。さらに完成させないということは新たな刺激を絶え間なく与えることです。刺激が発達を促すのです。

ある運動(刺激)ができそうになったら、その運動や体験を止めて次の体験や刺激に移ります。刺激慣れは適応を鈍くします。常に新しく、新鮮な刺激にさらされることが重要です。

子どの集中は15分ほどが限界と言われており、子ども向けアニメの多くが10分ほどであるのはそのためと言われています。このように目まぐるしく変化する体験と刺激が必要なのです。

かけっこ運動教室の事例

私が担当する小学校低学年を対象にしたかけっこ運動教室での事例をご紹介します。

運動スキルの習得はデザインした運動では難しいと言いましたが、スクールなどのようなデザインされた仕組みでも、工夫することで運動体験できる環境を作ることができます。

私の教室では生徒たちに、その日にやりたいことを聞きます。50分の練習時間の全てを彼らの好きなようにさせられませんが、半分以上の時間は彼らの興味があることをやるようにしています。

先日このようなことがありました。練習中の休憩時間にある生徒がフットサル用のゴールポストによじ登ろうとしました。それを見ていた他の生徒も面白がって登り始めましたので、その日はそれを練習にしました。

主たる目的を隠し、その目的を達成させることが指導では必要ですから、登ったついでに懸垂をさせる、飛び降りさせるなどをしました。これで抗重力のフィジカルトレーニングや着地時の身体操作性のコツの体験ができました。

また、別の日には女の子たちがフラフープとボールを使ってボール投げゲームを考案したので、それをそのまま練習させました。さまざまな的を作って投げる練習として捉えることができます。これも自分たちの興味のおもむくままに刺激に従った体験です。

しばしば同業の方々から子どの好きにさせていてはスクールとして成立しないのでクレームにならないかと質問を受けます。確かに、ただ場所を提供して勝手に遊ばせておくだけであれば教室ではないのでビジネス的に成立しません。

しかし、私の教室では子ども達の好きにさせてはいますが、彼らを自由にさせているように見せかけて、指導者が隠れた意図を持ち、結果それを達成させるように仕向けているのです。

子どもの指導において最も重要なこと

成果を求めない

さらに、上記の3点を基礎として子どもの指導において最も重要なことがあります。

それは成果を求めないことです。

とかく親や指導者は成果を気にします。特にスクールなどに預けている保護者は自分の子どもがどれだけ成長したか、あるいは習熟度が上がったかを気にします。私どもの教室でも退会理由のひとつに「成果が見えなかった」や、ひどいものでは「コスパが合わない」などもあります。子どもの成長がまるで経済投資のように捉えられています……。

指導者は親の目を気にして、またチーム運営やスクールなどの経営を考え、何とか目に見える成果を出そうとやっきになります。そうなるとスポーツ系幼稚園のように教えられた運動はできるけど、教えられていないことはできないということにつながります。

また、子どもは成果を出すために運動をしているわけではありません。興味に従って刺激を求めて運動をするのです。言い換えると本能に従っているだけです、そこに成果はありません。

特定の年齢にこだわらない

そして次に習得最適期です。これは誕生した直後から始まり第二次性徴が始まるころ(思春期前ぐらい)までと考えられます。【スポーツ指導の常識「ゴールデンエイジ理論」を疑え】の中でも触れていますが特定の年齢が最適期ではありません。

赤ちゃんはお母さんのお腹から出てきた瞬間から重力との格闘を始めます。重力に抗うようにして自分の能力を向上させていきます。正に環界との活発な交流の中で運動を発達させていくのです。

確かに運動学習、特に運動スキル習得の最適期は小学校年代であることは否定しません。しかし、中学生ぐらいでも可能であると考えています。

中学生ともなるとさまざまな経験則があるため、直観的な運動学習に加えてデザインした方法論やヒントを与えることである程度習得できると思います。また、高校生であっても早熟傾向でない者や力任せの運動をしない者であれば習得可能です。

実際、私が担当するスクールやかつて競技トレーニングを指導した中高生選手でも身体操作性を向上させるフィジカルトレーニングによって運動スキルが高まった事例があります。ただし、個別性はありますので習得に費やす時間と習塾度合いは小学校年代との比較では効率性には劣ることがあります。

運動スキルを習得する機会を大人が奪っている

運動スキルの習得は、特別な環境、道具や方法などは必要ありません。運動スキルは生活や遊びの中で習得すべきものです。

しかし、残念ながら近年では公園など「公共施設でのボール遊び禁止」、「勝利至上主義のジュニアユーススポーツ」、「偏った運動ばかり指導するスポーツスクール」、「スポーツ科学理論の間違った理解」、また「保護者による過保護や行き過ぎた期待感」など、運動スキルを習得する機会が失われる環境や状況ばかりが子ども達の周りに溢れかえっています。

運動スキルを備えていなくとも社会生活に困ることはないでしょう。しかし、身体活動である運動は人間の本能的営みです。スポーツ界では「心技体」という言葉がしばしば言われますが、これは精神と技(スキル)と身体は一体化しており、それぞれが欠けることなく充実することがスポーツや技の上達、人間性や社会性の形成には必要であるというような意味です。

保護者の方々はお子さんの健全な心身の成長を望むのであれば、運動スキル習得について案じるのではなく運動スキルを習得できる環境を与えることを考えてください。

専門家の方々は、もう一度運動スキルや運動学習指導、スポーツ運動学やトレーニング学について勉強をし、子ども達やその保護者に対して適切なアドバイスや支援ができるようにしてください。