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【専門家が徹底解説】「劣等コンプレックス」を消し去る6つのステップ

こんにちは、スポーツメンタルトレーニング指導士の河津です。

前回は一般にもよく知られている言葉である「劣等感」について、その正体を正しく知るということでお話をしました。

今回は劣等感からくる「劣等コンプレックス」にどう立ち向かうか?ということでその対処法についてお話をしようと思います。

前回の記事を見ていない方は、まず前回のお話を見ておくと理解しやすいと思います。

劣等コンプレックスは簡単に対処できるのか?

劣等コンプレックスとはなんなのかを簡単におさらいすると、運動神経のない(劣等性を持つ)人「自分は運動神経がないなぁ」と感じること(劣等感)、が原因でネガティブな気分になり、「自分の運動神経じゃ逆上がりなんて絶対できないよ(本当はできるようになりたいにもかかわらず)・・・だからサボろう」と運動課題から逃避するという行動を起こしてしまうネガティブな一連の流れ、反応のかたまりのことです。

この劣等コンプレックスを克服する方法を簡単に言うと、自分が持つ劣等性をポジティブにとらえるように自分の認知を変えていくということになります。つまり、欠点を欠点と思わないようにするというものです。

「なんかよく聞くな~」なんて思いませんか?

私自身「欠点は実は長所なんだよ!」とか「欠点は実は個性なんだ!」とか、そんな前向きなセリフを著名人のインタビューでよく見かけます。

もしかしたら皆さんも自分の欠点が原因で落ち込んでいる時にそんなこと言われたことありませんか?

同時にこうも思ったはず「そう思えたら最初から苦労しないわ!!」と。

そう、ここで問題になっていることは「じゃあどうしたら認知を変えていくことができるのだろうか?」ということです。

スポーツの現場では対処できない?

スポーツ現場でのメンタルの問題のほとんどは、このようにやり方までサポートできる人が少ないことにあります。

現場の監督・コーチはその経験から、「どうなればいいのか」というところまではたどり着けますが、「どうやればいいのか」という方法論まではなかなかたどり着くのが難しいと思います。

なぜなら、方法論はそれこそ研究者のように、事例をたくさん集めて適切に調査・分析を行ってはじめて明らかになる領域だからです。

もちろんスポーツ心理学の研究の分野では、その方法論がしっかりと考察されています。この後説明をしていこうと思うのですが、先に断わっておくと、それは容易なことではありません。

それこそ人に「それはお前の長所なんだよ!!」と言われたからといって、すぐさま「そうか!!」なんて納得いくものではありませんよね。よほど劇的な出来事でも起きなければすぐには変わることはできません。

実際はじっくり自分と向き合っていくことで可能になることなのです。

劣等性への対処方法「認知の再構成法」


Lewis Tse Pui Lung /Shutterstock.com

それでは、自分の劣等性に対する認知を変えていくための具体的な方法論である「認知の再構成法」を紹介します。以下のように全部で6ステップあるので、それぞれステップごとに分けて詳細に解説していきます。

ステップ①ネガティブになる「状況」を知る
ステップ②その状況の自分の「感情」を知る
ステップ③自分がどんな「行動」をしてしまうのか知る
ステップ④自分の感情を「受け入れる」
ステップ⑤ネガティブな語りかけを「ポジティブに変える」
ステップ⑥今までのステップを継続してトレーニングし「記録する」

ステップ①ネガティブになる状況を知る

最初のステップは「自分の劣等性や劣等感からネガティブな気分・感情・行動になってしまう状況」を詳細に思い出し、できれば紙などに書き出すことです。

劣等性や劣等感があるからと言ってそれが常に自分の行動に悪影響を及ぼしているわけではありません。例えば足が遅いという劣等感があるからといって、それが原因で数学のテストの時に逃避行動を起こすということは考えにくいですよね。

つまり、人によって劣等性や劣等感が明らかになってしまう状況が変わるということです。

ここでは、その人にとって特に劣等感を感じやすく、それが悪影響を及ぼしてしまう場面を特定しようとするステップです。これを明確にしておくことで、次回その状況になった時に気づきやすくなります。

ステップ②その状況の自分の感情を知る

次のステップは、「その状況におかれたときの自分は頭の中で何と言っていたか?その時の気分や感情はどんなものか?」を思い出し書き出すことです。

ここが問題の本質になります。

つまり、足が遅いこと(劣等性)や足が遅いと自分で思うこと(劣等感)を、自分がどう認識するかというところです。

これを、「認知的評価」と言います。簡単に言えばこの劣等感を自分でどう評価するかということですね。ここがネガティブであれば結果もネガティブに、ポジティブであれば結果もポジティブになります。

ステップ③自分がどんな行動をしてしまうのか知る

前のステップで自分の感情を知ったら「その結果起きる身体的な変化(足が震える、頭が真っ白になる等)や行ってしまう行動(その場から逃げだすなど)、最終的にどうなったか」を書き出しましょう。

ここでは、劣等性や劣等感に対してネガティブな認知的評価をしてしまったときどうなってしまうのか?そのネガティブな結果を認識する段階です。それがはっきりすれば、自分がいかに「自分のためにならないこと」をしているのかがよくわかるということです。

ステップ④自分の感情を受け入れる

次は、なぜ「ステップ①のような状況」になると「ステップ②のような認知的評価」をしてしまうのかを考え、そしてそれを受け入れることです。

実はこのステップが最も忘れられがちで、厄介で、そして最も大事なステップになります。

まず,なぜ劣等性や劣等感によってネガティブな思考や気分になってしまうのかを考えることからこのステップは始まるのですが、ここで「非合理的信念」や「認知のゆがみ」と呼ばれるネガティブな思考の奥に潜んでいる厄介者を認識する必要があります。

「非合理的信念」「認知のゆがみ」とは?

この「非合理的信念」というのは、読んで字のごとく「合理的でない信念」のこと、「認知のゆがみ」とは間違った(ゆがんだ)思い込みのことです。

例えば、あなたが一人で道を歩いていると、目の前から異性の二人組(あなたが男性なら女性の、女性なら男性の二人組です)が歩いてきます。

すれ違いざまにすれ違った人がクスクス笑い始めました。こんなとき、急に不安になることはありませんか?「えっ!?俺なんかおかしなことしたのかな?」とか、「やっぱり俺ってダサいのかな?」とか、人によっては「あ~~絶対私のこと笑ってるよ・・・」なんて断定しちゃっている人もいるんじゃないでしょうか?

でもこれは第三者的な目線で見たらかなりおかしな結論ですよね。

その二人はただ昨日見たバラエティ番組について話していて思い出し笑いしただけかもしれないでしょう?

それに自分目線で考えてみたら、すれ違う人たちをいちいち詳しく観察なんてしていないことはわかりますよね。芸能人やよっぽど奇抜な格好をしていない限りそんなに他人は自分のことなんて見ていないものです。

わかってるんだけど、そんな不安が出てきてしまう。これは大した根拠もないのに飛躍した考え方をしてしまう「結論への飛躍」と呼ばれるものです。

そのほかにも、「自分は上司なんだから常に尊敬されるような振る舞いをするべきなんだ!!」とか「チームのエースである俺が点を取らなきゃいけないんだ!!」など、別に周りはそこまで厳しく求めているわけでもないのに、自分の中の基準が強すぎて自分を苦しめてしまう「べき思考」などというものもあります。

このように、自分の持っているそもそもの考え方の癖、間違った認知のゆがみが、それほど気にしなくていい、むしろ自分のプラスになる可能性のある劣等性や劣等感を、嫌なものとしてネガティブにとらえてしまう要因となっていることがよくあります。

それを認識することがここでの大事なポイントです。そうして初めて、そのゆがんだ認知、思考のクセを持っている自分を受け入れることができるようになるのです。

素直な自分と合理的な自分のバランスをとる

ただ,この受け入れる作業がもっとも厄介になるところでもあります。非常に説明が難しいのですが、少々強引に説明するならば、漫画でおなじみの描写、男同士がケンカして「やるじゃねーか!」「へへっ、お前もな!」みたいなやつに似ているなという感じです。

劣等感からネガティブな思考をしてしまうある意味「素直な自分」と、そしてそれをよく思わない合理的な考え方になろうとあがく「合理的な自分」が喧嘩しちゃうわけですね。

「ネガティブな思考を改善したい」とか「変えたい」などと思う「合理的な自分」からは,「素直な自分」を排除したいという、「否定」や「拒絶」のイメージを感じます。それはステップとして受け入れる前にはあってしかるべきものなのだとおもいます。

ただ、そのあと一方的に「素直な自分」をねじ伏せるだけでは、「やるじゃねーか」「お前もな!」のエンディングにはたどり着けません。ただの弱い者いじめですからね。「素直な自分」の反撃があればこそ、五分五分だからこそ認めることができるのだと思います。
 
つまり感じたままにしておく、「素直な自分」の赴くままに、思ったこと(愚痴や汚い言葉も出てくるかもしれません)を押さえつけようとせず、あえてくらう、受けて立つ!そうすることではじめて「素直な自分」が理解できるようになるのではないかと思います。

実際のカウンセリングの事例において、何かしら問題を抱えるクライアントが、初めは問題を「拒絶」し徐々に「受け入れる」というステップにおいてよく見受けられることです。もちろん人によるということは断っておきますが......。

ステップ⑤ネガティブな語りかけをポジティブに変える

ステップ②で起こる、非合理的でネガティブな自分に対する語りかけを、ポジティブなものに置き換え、それによって予想されるポジティブな結果も考えましょう。

ステップ④で自分の非合理的信念やそれによってネガティブ思考になっているダメな自分を受け入れることができたら、そこで初めて非合理的なものを合理的なものに切り替えて考えることができます。

受け入れるということが本当の意味でできていなければ、いくら言葉だけポジティブなものに変えていてもなかなか納得がいきませんし、ネガティブな思考の方に気を取られてしまいます。

なお、ここでのポジティブな言葉は短く簡潔で,今自分が意識を向けるべきところに注意をコントロールするようなものが良いと思います。例えば「勝つ」とか「勝てる」とかよりも「相手の●●に集中だ!!」とか「自分の●●の感覚に集中だ!!」などプレーに関するものですね。

ステップ⑥今までのステップを継続してトレーニングし、記録する

ステップ①~⑤までで行ったことをイメージや実践の場で練習し何度も試して、その際の結果などは練習ノートなどに書き留めてチェックしてみましょう。

具体的に言うと、イメージなどを用いた場合は、

1.まずステップ①で思い描いた状況をイメージを想像する
2.そこで今までの自分がやってしまうネガティブな思考を思い浮かべてみる
3.ここで一度思考停止!(腹式呼吸をしながら呼吸時間を数えてみるなどして、意識を他のものに向けたりするのが効果的です。)
4.ステップ⑤で考えた、ポジティブな言葉を自分に言い聞かせる。

と言った手順をくりかえしイメージでおこない、イメージの中では自分の思考や感情、身体の感じがどうなったか?などをモニタリングして振り返るなどでトレーニングしていきます。もちろん実践の場でも試してみるとなお良いです

根気よく続けることが大切!

以上が具体的なやり方をまとめたものです。久しぶりにとても長くなってしまったのですが、つまりは簡単なことではないということですね。

ですが、根気よく続けていけば必ず克服できることでもありますので。ぜひ試してみてください。

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<参考文献>

• スポーツメンタルトレーニング教本
   大修館書店,2002年,日本スポーツ心理学会 編

•  最新スポーツ心理学―その軌跡と展望―
   大修館書店,2004年,日本スポーツ心理学会 編

• イメージ体験の心理学
   講談社,1992年,田嶌誠一 著