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子どもの可能性を守る、ジュニアスポーツの新常識「成長特性」を知る。

こんにちは、ジュニアユースを対象にした育成やフィジカルトレーニング、運動学習などをテーマにした講演活動や、強化育成システムの研究活動をしている「小俣よしのぶ」です。

今年の夏はスポーツイベントが目白押しでしたね。

リオデジャネイロオリンピックでの日本勢の活躍は目覚ましいものがあり、2020年に開催される東京大会への期待が膨らみます。さらに高校野球、広島カープの優勝、先日はFIFAワールドカップサッカーロシア大会のアジア最終予選も始まりました。


lazyllama / Shutterstock.com

夏休みは子どもたちにとってもスポーツ活動の最盛期で、各地で試合や練習、合宿などが盛んにおこなわれていました。

しかしその一方で、保護者の方からしばしばこのような相談を受けます、「我が子が他の子ども比べると身体が小さい」「力が弱いので試合で負ける」「体力がなく練習についていけない」、または「補欠ばかりで面白くなくチームを辞めるかスポーツを替えようか悩んでいる」「そもそもスポーツに向いていないのではないか」という話です。

身体の大きさは、自身の努力では何ともしがたいハンデキャップです。

子どものころの身体の大きさは「成長特性」が大きく関係する

「学校のクラスの中に身長や身体が大きく大人びた同級生がいた。」逆に、「身体が小さく教室での座席位置や整列時はいつも一番前、まるで2・3学年ほど年齢が下ではないかと思うような同級生いた。」また、「女子の方が成長が進んでいる。」

読者の方のなかにも、子ども時代にこのような印象を持ったことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか?

そして、成人してクラス会・同窓会などで久しぶりに会うと、子どものころ大きかった人も小さかった人もだいたい同じぐらいの背丈や体形になっていることに驚いた経験がありませんか?

このような例から子どもの時期、特に小学校から中学校にかけては成長度合いに個別差と特徴があることが分かります。これを「成長特性」などと呼びます。

人はそれぞれ性格や趣味が違うように、身体成長も個人ごとに異なる特性があるということです。

子どもの成長特性の3タイプ

「早熟タイプ」や「晩熟タイプ」という言葉を聞いたことがあると思います。

これらは成長特性のタイプや傾向を言っており、一般的には「早熟型」や「晩熟型」、「中間型(平均型)」と分けられます。これらは身体成熟の進行度合いにより成長特性タイプを大まかに分類しています。

身体成熟の進行度合いとは身体、特に長育(身長の発育)の度合いのことを言います。

簡単に言うと、成人身長(成人して最終的に伸びが止まった身長)にどれだけ達しているかの度合いです。

早熟型は子どもの時点で成人身長に近づいているタイプ、逆に晩熟型は成人身長まではまだまだ発育余地があるタイプ、中間型はどちらでもなく平均的なタイプということです。

早熟型の子どもは大人の身長に近い、言い換えると成人の身体形態に近いと言え、晩熟型はその逆となります。

早熟タイプの典型例

一例を挙げますと昨年話題になった高校野球、早実の清宮幸太郎選手は典型的な早熟型です。


出典:Little League World Series 2012

彼はリトルリーグワールドシリーズ(リトルリーグ世界選手権)出場時(13歳)にすでに身長が約180cmあり、聞いたところによると現在は184cmほどだそうです。また、女子バレーボール界のかつてのエース栗原恵選手は中学生時に身長がすでに170cm後半(現在は187cm)あったそうです。

清宮、栗原両選手とも中学校時点ですでに成人身長に近いところまで身体成熟が進んでいました。つまり中学生にして身長は既に成人であったと言えます。

成熟度とスポーツの関係性

では、なぜ成熟度合いが進んでいるとスポーツ活動で有利に働くのでしょうか?

筑波大学大学院を退官されたスポーツ発育発達学の第一人者「高井省三」先生の研究によると、「パーセント成人身長が高い子どものほうが新体力テストの結果、特にパワー系種目と考えられる50m走、ボール投げなどの成績が高かった」ということです。

パーセント成人身長とは成人身長に対する比率で、これが高いほど成人身長に近くなります。

この研究知見を簡単に言うと、大人に近い身体的特徴を持った子どもは力が強く、大きな力を瞬時に発揮できると言え、言い換えると子どものスポーツにおいては身体が大きく、力の強い子が有利であるということでもあります。

この研究の結果からすると成熟が進み、身体が大きく、力の強い子はスポーツ向きとなり、早熟傾向の子どもを集めれば強力なチームを作れる可能性があるということにもなります。

確かに現在のジュニアユース競技スポーツにおいては早熟型の選手が多く見受けられ、またジュニアユースの国際競技大会などで日本チームや選手が活躍する背景には、この問題があります。

前述の清宮選手などは、大人が子どものルールのリトルリーグでプレーしているので勝つことができたとも言い換えられます。

早熟もいいことだけではない

しかし、早熟傾向はいいことばかりではありません。

早熟型のジュニアユース選手は「成人の身体形態に達している」、言い換えると「トレーニング余地が限られている」ため、あるレベルまで来るとパフォーマンスの伸びに頭打ちが出ます。

これは本来であれば思春期後に行うべきトレーニングを早い時期に行ってしまったために起こる弊害です。中間型のように平均的な発育発達傾向であれば、年齢相当の能力しかないため高度なトレーニングはできないため、段階的にパフォーマンスを高めていくことができます。

しかし早熟型は段階を先取りしてしまったため、残された発達余地が少なくなっています。言い換えると完成形に近づいてしまっているということです。子どものころには選手として大活躍していたのに、気が付くと晩熟型や中間型に追いつかれ、さらには追い抜かれてしまうこともあるのです。

これはかつて非常に高度で先進的なジュニアユースアスリート選抜育成システムを構築した東ドイツでも「ジュニアユースチャンピオンは成人チャンピオンではない」と言われています。要するに「ジュニアユース段階での発育発達の優位性はジュニアユース段階だけでしか通用しない」ということです。昔話で例えると兎と亀の競争ですね。

けがやスポーツ障害が多くなる傾向も

また早熟型の選手はけがや障害も多くなるようです。これは身体が大きく、力が強く、高いパフォーマンスを出すために指導者が強い負荷のトレーニングを課したり、あるいは野球であれば連投をさせたりなど、オーバートレーニングに陥りやすいことが原因のようです。

さらに彼らの多くは、身体操作性に欠けることがあります。これは力が強いため、走れば速い、投げれば豪速球、打てばホームラン、ぶつかれば相手を吹っ飛ばす、と言うように力を背景としたパフォーマンスになりがちです。


Denis Kuvaev / Shutterstock.com

これはスポーツスキルに必要な巧緻性や器用さなどが多少劣っていても力で解決してしまうことが背景にあります。しなやかな身のこなし、素早い動きなどの身体操作性の基礎、あるいは「即座の習得」スポーツ指導の常識「ゴールデンエイジ理論」を疑えを参照)が備わることなく成熟してしまいます。

これでは上のレベルでプレーする際に段違いに速くなるプレー速度(動きや判断などの速さ)について行かれなくなったり、高度な戦術やスキルの習得や洗練化につまずいたり、感覚の変化や鈍さに戸惑ったりするようです。

残念ながら早熟型の選手には「かつては神童だったが……」という結果になる可能性があるということです。

目先の結果を求めず、先を見据える

最後に、ジュニアユース期におけるスポーツ活動や能力は成長特性に大きく影響されます。これは選手自身の努力では何ともし難い理不尽なことです。

しかし、自身の成長特性をしっかりと理解し、目先の結果を求めないことが肝要です。

特に晩熟型の選手は腐ることなく、じっくりと自身を熟成させる考え方が必要です。そしてスポーツ活動を余暇として捉えてゆるく、自分のペースで進みましょう。

兎と亀の競争は兎には兎の走り方、亀には亀の歩み方があります。亀は兎の走り方をまねできません、しかし兎も同様なのです。保護者・指導者の方も今回の内容をしっかりと覚えて子どもの成長を見守りましょう。