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本当は怖いスポーツ医学【第2回 深刻なケガを見逃さないためには】

スポーツとは切っても切り離せない怪我や故障の恐怖について、Jリーグの「柏レイソル」や「川崎フロンターレ」のチームドクターとして数々の現場で実績を重ねたスポーツ整形外科の医師「武田 康志」先生にお話を伺う本連載。

今回は第2回目で、病院選びで失敗しないためにはどうすればよいか、一般的に間違った認識が広まってしまっているケアの方法などについてお話いただいた。

本当は怖い「スポーツ医学」【第1回 スポーツ整形外科とは?】

深刻なケガを見逃さないために、いくつか病院を回ってみることも大事

ーー前回最後に「一般の方の場合、軽い怪我が重大な怪我に繋がっている可能性がある」と答えられていましたが、先生のクリニックに来た患者さんのなかでそのようなケースの方はいらっしゃったんですか?

あまり詳しくは言えないのですが、バレエを習っている女の子が来たときがありました。その子は2軒の病院で診断してもらい、最後の当院に来たのですが、その時の2軒目の病院の診断は1軒目と全く違ってましたね。

ーーひどかったというと、間違っていたということですか?

1軒目の病院は「骨折している」という診断をしており、2軒目の病院は「していない」との診断をしていました。

女の子は痛がってはいないものの、前者を信頼していたので、もう一度レントゲンを撮影してみると誰もが見逃さないような骨折があって驚きましたね。

ーーそんなことがあるんですね......!

まあ、言わせてもらうとそういう例はあるんですよ。もちろん、いつ自分がそうした見たて違いをするか分からないので、なるべくよく患者さんから話を聞く、患者さんを診察する必要な検査はすべてするというスタイルにしています。

他にもサッカーをやっている男の子が2〜3軒他の病院を周って来たんですが、”痛みが出て1週間ほどはかなり痛かったものの、徐々に痛みが引いて歩けるようになった。しかしジョギングするとかなり痛い”と。

レントゲンをとったら案の定、足関節の部分の成長線の骨折があり、(珍しいですが)、すぐに歩かせないようにしましたね。

この時は成長線の骨折で、この骨折が治る前に運動すると成長線が潰れてその骨だけが伸びなくなるんですよ。足の場合は片方の骨だけが伸びて、片方が伸びないから常に足が傾いているような状態になってしまう可能性を残します。

ーーうわぁ、それは怖いですね。やはり病院でも腕の良し悪しはあるんですね。

さっきのバレエの女の子は大会が近く、大会での踊りでは痛まないことと、お母さんがどうしてもということで、当院では薄いプロテクターを作って練習してもいいということにしました。最終的な結果は同じですが、やはりわかってやっているのとそうでないのでは決定的に違いますよね。

成長線の骨折は成長期の子供に多く、後になってどうしようもないので、なんともないと診断されても痛みが引かない場合は、MRI検査を希望するか別の病院で診断してもらった方がいいです。

ーー病院を選ぶときに見るべき基準はあるんですか?

いや〜、ないですね。いくつか行って信頼できるところの話を聴く。もしくは口コミで選ぶといいですね。手術しているところでは手術の後選手が確実に復帰しているところとかですね。

ーーなかなか適した病院は見つけにくいんですね。

医学は宣伝をしたらいけないから難しいんですよ。当院ではウェブサイトに手術の症例の数を掲載し、業界人から見て実績がわかりやすいようにしていたり、患者の数のグラフを作成し公開することで実績があるということを示す工夫はしています。
事実だけで語るようにしていますね。

一般で間違った認識が広がっているケア方法

ーー診断のプロである医師の間違いについて伺いましたが、我々一般の間で正しいと思われている処置方法で間違っているものについて伺いたいです。

ーー一般では当たり前のように行われているけど、プロの目線から見ると危ういものなどはありますか?

う〜ん、そうですね。強いていうなら「アイシング」ですかね。

ーーアイシング!意外ですね。

アイスパックをラップで巻いて患部を長時間冷やしているのは怖いですね。アイシングにはなぜか冷やせば冷やすほど効果があるような先入観があると思うんです。

しかし、冷やしすぎで神経麻痺になる可能性があるのでかなり危険だと言えますね。

膝の前の皮膚が薄い場所に固定して寝てしまったりすると、寝ている間に氷が外側にずれて「腓骨神経麻痺」になったりします。。

だいぶその症状になってる選手を見てきましたね〜。陸上でかなり優秀な成績の選手から「アイシングを自分でしっかりやりすぎて足が上がらなくなりました。競技復帰できないんですが、何か治療法はありませんか?」とか言われたこともあります。

ーーいや〜、そんな話初めて聞きました。にわかには信じられないですね。

表には出てきませんが、こんなアクシデントで選手が選手生命に影響を与えてると思いますよ。

ーーやはり神経を圧迫したことや、長時間冷やしすぎたことが原因になるんですか?

そうです。部位によってどこに神経が通っているかしっかり知っておいて、長時間冷やさないようにしたり、居眠りしてしまわないようにしてください、冷却での神経麻痺は戻りませんから。凍死と同じようなものです。

皮下脂肪少ない人が膝の裏に当てておくと、20分とかで発症したケースもあるので要注意です。神経切って貼ったりすることで、動くことは動くけど2度と元の感覚には戻りません。

ーー症状がでない適切な時間や、効果的な方法はありますか?

皮下脂肪が薄い人では10分冷やすだけで、神経の伝達速度が遅くなったという研究結果も出ているから基本的には「寝ないこと」。ズボラな人や寝てしまいやすい人は手で持っておくようにするといいですね、寝たらアイスパックが落ちちゃうから安全です。

効果的な方法に関して日体大で研究していたときにわかったのは、同じ15分冷やすのでも1度で冷やすよりも、5分ずつに分けて3回冷やした方が効果が高いということです。

ーーなぜそんな結果になったんですか?

アイシングには2つの効果があります。温度差によって血管を収縮させたり弛緩させたりすることで、血流をよくして回復を促す効果がひとつ。

もうひとつの効果は、体のなかの「ヒートショックプロテイン」を反応させる効果です。この「ヒートショックプロテイン」は高温でも低温でも温度によるショックを与えられたときにその部分を治癒する効効果をもたらすのに影響を与える因子です。

アイシングの回数を増やすことでこれらの刺激回数を増やすことで効果が高まる可能性を当時は考えましたね。

研究したのももう10年前のことなので今ではかなり別の研究結果が出ているかもしれませんが、当時でもこんな研究をしていました。

ーー10年も前の研究でわかっているのに、一般の人が知らないのは怖いですね。

アイシングはいたずら長時間に冷やさないことが大切ですね。タイのボクサーなんかは伝統的に打撲などを温めて治療する文化がありますし。これは冷やすとは逆に温めることでヒートショックプロテインをださせているのではないかと考えてましたけど。

最終回はスポーツドクターが考える「スポーツの意義」と「一流の選手」

今回はスポーツ外傷時の病院の選び方や、身近なケア方法として馴染み深かったアイシングに意外な危険があることがわかった。

最終回の次回は、数々のトッププレーヤーをドクターとして支えてきた武田医師が語る「スポーツの意義」と「一流の選手」についてだ。