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【Rock and Hammer】バスケットボールの最高峰、NBAの世界で僕が見てきたもの

はじめに

はじめまして、ダイス・ヤマグチ(DiceYamaguchi)です。今回から、MUSTERで連載を始めます。
この場を借りて僕の経験してきたこと、学んできたことを共有しながら、皆さんからも多くを教わっていきたいと思っています。

まだまだ未熟の身ではありますが、どうぞよろしくお願いします。

サンアントニオ・スパーズとは

「サンアントニオ・スパーズ」と言う名を聞いて、ピンと来る方が日本にどのくらいいるでしょうか。おそらく、そう多くはないだろうというのが僕の予想です。

では、NBAはどうでしょう。何のことか、すぐにピンときましたか?

サンアントニオ・スパーズは、アメリカプロバスケットボール協会=NBA(National Basketball Association)に所属するテキサス州サンアントニオにあるバスケットボールチームです。


Michael Tipton

日本では一般的にあまり馴染みがないであろうこのチームに、僕はアスレティック・トレーナー(ATC、またはCertified Athletic Trainer)として、2014年7月までの7年間所属していました。

このチームは日本でこそ知名度が高くないものの、ここ16シーズンのうち、1999、2003、2005、2007、2014年と5回の優勝を果たしています。

さらには現在、NBA史上で勝率歴代一位の記録(61.9%、2015年時点)を持ち、18年連続プレーオフ進出、そのプレーオフでも勝率6割以上を続けている驚異のチームなのです。

勝率についてイメージしやすくなるように、アメリカ4大スポーツ(バスケットボール、野球、ホッケー、アメリカンフットボール)のトップチームの歴代勝率を以下に並べます。

野球のニューヨーク・ヤンキースは56.9%(MLB、2014年時点)
ホッケーのダラス・スターズは51.6%(NHL、2015年時点)
アメフトのシカゴ・ベアーズは57.0%(NFL、2015年時点)

この数字を見ると、サンアントニオ・スパーズの勝率の高さがわかっていただけるでしょう。

30ものチームがひしめき合うNBAで勝ち続けるのは、簡単な事ではありません。
ドラフトでは、前年の勝率が低いチームほど高い指名権を与えられます。

またサラリーキャップ(リーグ全体で取り決められている、各チームが選手に支払える総額の上限)はありますが、支払総金額が上限を超えても罰金さえ支払えば許される「ソフトキャップ」という制度が設けられています。

つまり罰金なんて痛くもかゆくもないほどお金のあるオーナーのチームであれば、選手を好き放題連れてくることもできます。

しかしサンアントニオ・スパーズのオーナーであるピーター・ホルト(Peter Holt、ショベルカーなど日本でもよく見かけるCaterpillarInc.のオーナー)の財産は、NBAのオーナーの中では下から数えたほうが早いほどなのです。

それにも関わらず、なぜそんなに勝てるのか?
結果を出し続ける組織とメンバー(スタッフ、選手たち)がどのようなマインドで、どのような取り組みをしているのかを紹介しましょう。

岩とハンマー

スパーズの練習施設のチーム専用入口に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが”Rock and Hammer”(岩とハンマー)のディスプレイです。

施設を建てるときに壊した岩とその時に使ったハンマーかな、とチームに参加した当初は思っていたのですが、実はこれこそがサンアントニオ・スパーズにとってなくてはならないチームの象徴なのだと、後になってから気がつきました。

スパーズのヘッドコーチであるグレッグ・ポポビッチ(GregPopovich 愛称:ポップ)はNBA界現役最高のとの呼び声が高く、2017~2020年のアメリカ代表チームのヘッドコーチを務める事も決まっているほどのコーチです。その彼がシーズンを通して、選手たちにこれでもかというほど繰り返すのが”Pound the Rock”(岩を叩け)というフレーズ。

このフレーズはジェイコブ・リース(Jacob Riis)というジャーナリストの、

”When nothing seems to help, I go and look at a stonecutter hammering away at a rock perhaps a hundred times without as much as a crack showing in it. Yet at the hundred and first blow it will split in two, and I will know that it was not that blow that did it but all that had come before.”
(何もかもうまくいかないとき、ある石切り職人が岩をハンマーで叩いていた時のことを思い返すものだ。彼が100回叩けども岩にヒビは入らなかった。それがどうだ、101回目の一撃が遂に岩を真っ二つにしてしまう。その時私は思うのだ、あれはそれまでの積み重ねがあったからこそ起こりえたことで、あの101回目の一撃だけが特別なものではなかったのだと。)

という引用文から取ったものです。


↑スパーズのロッカールームに飾られてあるJacob Riisの言葉

NBAの1試合は48分。世界中のエリートが集まったこのリーグは、残り5分で20点の差があろうと、気を抜けば簡単にひっくり返されてしまう世界です。一秒たりとも気を抜く事はできません。

選手たちはそのような試合を1シーズン、およそ6ヶ月の間に82試合消化しなくてはいけません。単純計算で、ほぼ2日に一度は試合をする事になります。

しかも、そのうち半分はアウェイでの試合。試合の合間には、大きなアメリカ大陸内を移動しなくてはならないので、日々積み重なる疲労は軽いものではありません。

レギュラーシーズンが終わると優勝までに2ヶ月かかるプレーオフが待っています。プレーオフでの精神的、肉体的ストレスはレギュラーシーズン以上です。

一時一時を集中する事の大切さ、そして常日頃から体調を整え、できるだけベストな状態で練習、試合に臨むこと。そうでなくてはNBAで勝ち残る事はできない、ということをポップは”Rock & Hammer”を通してチームに伝えていたのです。

トップであり続けるために

僕は高校卒業後、NBAという世界で働くことを夢見て日本を飛び出しました。
夢だった世界に実際に入ってみると、そこには驚くほど”特別さ”を感じさせないスタッフと選手たちがいたことに大きな感銘を受けたのを覚えています。

初めて施設に足を踏み入れると、どのコーチも選手も僕に握手を求めてくれて、自己紹介をしてくれました。

ついこの間までテレビで見ていた人たちが、見ず知らずの僕に対してにこやかに話しかけてくれるのを目の当たりにして、彼らが自分たちのことを”特別だ”とは思っていないということに気づきました。

ではなぜ彼らがNBAで活躍出来ているのでしょう。
それは”続けられる能力”を持っているからかもしれません。

「天才とは1%のひらめきと99%の努力から成る」というのはトーマス・エジソンの言葉。解釈は人それぞれかもしれませんが、僕はこの名言がスパーズのメンバーに確実に当てはまると思っています。

”才能”という努力ではどうしようもないものも必要かもしれません。ただ、どんなに才能があってもNBAにたどり着けない人はいます。逆に才能がないと言われながらNBAで活躍している人もいます。

何か特別なことをしたのではなく、目標を持って当たり前のこと、誰でもできることを積み重ねてきたからこそ、彼らはそこにいるのです。

Rock & Hammerの精神こそが、成功するためには何よりも大切なものなのかもしれません。

次回はNBA選手達の”努力”について触れる予定です。お楽しみに。

▼続きはこちらから

≪参照≫
https://ja.wikipedia.org/wiki/サンアントニオ・スパーズ
http://stats.nba.com/history/
http://statshockey.homestead.com/alltimestandings.html
http://www.cbssports.com/mlb/eye-on-baseball/24745899/the-all-time-mlb-standings
https://en.wikipedia.org/wiki/NFL_win–loss_records