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【東大・深代教授に聞く】「運動が苦手」は才能のせい?

文武両道の子どもに育てたい、かけっこで一番になりたい…。

私たちが漠然と「こうなれたらいいのに」と思っては「やっぱり高望みだよね」と諦めてしまっていること、実は諦めなくてもいいらしい。

話を聞いたのは、スポーツバイオメカニクス研究の第一人者で、東京大学大学院・総合文化研究科の深代千之(ふかしろ・せんし)教授

最新科学の見地からわかった、運動も勉強もできる人になるためのコツを、4回にわたって紹介する。

「運動が苦手」は才能のせい?

突然ですが、今これを読んでいるあなたは、右利きですか?
それとも左利きですか?

多くの人はスポーツでも勉強でも、あらゆる作業で無意識のうちに利き手ばかりを使っているはずです。

右利きの場合は左手・左利きの人は右手(=非利き手)では、上手く字が書けなかったり、箸が使えなかったり、ボールが遠くへ投げられなかったり…。

利き手なら簡単にできることが、非利き手だと途端に難しく感じてしまいますよね。

では、ある日突然、利き手に大ケガをして、ギプス生活を送ることになったとします。

全治数か月、さあ困りましたね。

利き手が使えないとなると、非利き手で日常生活を送るしかありません。

学校でノートを取るのも一苦労。

給食の時間は箸が持てず、スプーンとフォークを使うしかない、それでも食べこぼしてしまうかもしれません。

スマホで友達と連絡を取ろうと思っても、フリック入力に普段の何倍も時間がかかって、じれったい思いをすることでしょう。

さて、利き手が使えないという不便ながらも時間は過ぎます。

ギプスが外れる頃には、どうでしょうか。

怪我をした日には上手くできずに困ったことが、非利き手での生活に慣れてくるにつれて、少しは上達しているのではないでしょうか。

非利き手は、書くとか箸を使うといった作業が「できない」わけではありません。

まして「才能がない」わけでもありません。

これまで「使ってこなかった」だけ。

たくさん使っていれば、利き手と同じように、自分の思いのままに扱えるようになるのです。

利き手と非利き手の関係は、運動が得意な子と苦手な子の関係と同じです。

運動が得意な子は「やってきたから」得意だし、苦手な子は「やってこなかったから」できない。

勉強も同じで、やればできるし、やらなければできないままですね。

「昔から運動が苦手」というのは単なる思い込みですから、今すぐ考えを改めましょう。

「やらなかった」だけです。

裏を返せば、運動も勉強もやりさえすれば誰でも必ずできるようになります。

「得意・苦手」を分かつのは、「やるか・やらないか」だけなのです。

「やる」のが難しい理由

「やればできるというのはわかるけれど、その『やる』のが難しいし諦めちゃうんだよね」と思っている人もいるでしょう。

その通りです。

その理由はずばり、楽しくないから。

みなさんも身に覚えがあるでしょうが、楽しいと思えることは、寝る間も惜しんでやりますよね。

子どもも大人も、楽しくなければ続けられません。

できないことをできるようになるまでやる、というときには、モチベーションが欠かせないのです。

現代病ともいえるメタボリックシンドロームは、運動不足が主な要因のひとつです。

運動不足解消のために「一日一万歩をノルマに歩こう」などと啓発されることが多いですが、これではメタボの人は一向に減らないと私は思っています。

「歩くだけ」というのは一見簡単ですが、単調すぎてつまらないからです。

このように、歩くことが主な目的だと飽きてしまいますが、たとえばゴルフのように「ボールを追うために歩く」のなら、楽しみながらできるという人は多いのではないでしょうか。

つまり、運動ができるようになるかどうかは、楽しいと思えるかどうか・興味を持てるかどうかにかかっています。

「嫌々やらされている」と思ってしまってはダメ。

土日になっても家から一歩も出ずにゴロゴロしている親に「公園で走ってこい」と言われたところで、子どもは「自分一人で苦しい思いをするなんてつまらない」だけです。

たとえば一緒にキャッチボールをするなど、親が子どもと一緒に楽しむことが大切です。

できなかったことができるようになったときの達成感や感動を、一緒に味わいましょう。

楽しいと思える環境が必要

また、競争できる環境も必要です。

ライバルに勝ったときのうれしさも、負けたときの悔しさも、どちらもモチベーションになります。

親が競争相手になれたらいいですね。

楽しければやるし、やれば必ずできるようになる。

だから楽しいと思える環境が必要、というのが、今回のキーワードです。

次回は「運動と学力」がテーマです。

筆者情報・深代千之(ふかしろ・せんし)

東京大学大学院総合文化研究科・教授、博士(教育学)。
1955年、群馬県生まれ。

トップアスリートの動作解析から、子どもの発達段階に適した運動能力開発法まで幅広く研究する、スポーツ科学の第一人者。

日本バイオメカニクス学会会長、(一社)日本体育学会会長。

著書に『日本人は100メートル9秒台で走れるか』(祥伝社)、『運動も勉強もできる脳をそだてる「運脳神経」のつくり方』(ラウンドフラット)など多数。